湘南サッカー50年に寄せて

49回生  元松 経男

 私がサッカーをはじめたのは、湘南へ入学してからであった。そんなわけで、はじめはボールの蹴り方もわからなければ、ルールも詳しくは知らなかった。それでも私の高校生活3年間はサッカーであけくれた。
 サッカー部へ入って夏までの数ケ月間は、大野さんと野付さんの2人の3年生の下で、基礎練習ばかりが続いた。はじめは新入生も20人以上はいたように思うが、ラグビーボールと野球のボールを気にしながら、グラウンドのはじの方でパスの練習をしたり、お伊勢山を何度も登り下りしているうちに、15人程に滅っていた。たしか、梁と渡辺だけは、早くから二、三年生と一緒に練習をやっていたように思うが、うらやましく早く自分もあのような練習をしてみたいといつも思っていた。
 やがて三年生が引退して、二年生と一緒に練習をするようになって、これはたいへんなクラブに入ってしまったと思いつつも、だんだんと勉学を忘れサッカーにのめりこんでいった。
 私達の上の代は、2年の頃からレギュラーだった人が多く、将来を有望視されていて強い学校とよく練習試合をした。千葉や藤枝へも遠征した。それなのに、私をはじめとして私達の代がよく足を引っぱって、なかなか優勝までたどりつかなかった。本当にもうしわけないといつも思っていた。それでも、上の代の人達は私達を良くめんどうみてくれた。今思い出してみても、私達は良い環境にめぐまれていた。
 しかし、強かった先輩が引退して、気がついてみると、かってない程の弱小チームが残されていた。
 新人戦でベスト8に残ったため、どの大会もシードされたが、いつもかんじんなところで負けてしまい、新聞に載る記事は、“湘南敗れる”ばかりであった。それでも、私達の代は、1年の夏休みを過ぎてからやめる者はほとんどなく最後まで残ったのは14人であった。勝負には弱くても、得点力はなくても、湘南のサッカーは十分に理解して、自分達なりに精一杯ボールを蹴ってきた。そんな中で、私達が他の代に決して負けないものをひとつだけ誇ることができる。それはチームワークである。レギュラーとして試合に出ることができたのは7、8人であったと思うが、それでも、14人が14人、常にサッカーに熱中していたような気がする。
 先輩、後輩にめぐまれた私達は、湘南サッカーの谷間の時代といわれながらも、楽しく、そしてつらい練習が待ちどおしくて、授業の終わるのをいまかいまかと待っていた3年間であった。
 湘南を卒業して7年目の現在も、チームワークが売りものの私達の代は、年に何度かは皆で集まる機会をもっていることを記して、筆を置きます。

49回  元栓 経男

 4時間目が終わって部室に行き、着がえをして、シューズのひもをむすんでグラウンドに出る。私にとって一日のはじまりである。湘南の先生は、あまり勉強に関しては口うるさくなかったので、まさにサッカーをやるために学校へかよっていた3年間であった。
 3年生が引退して私たちの時代になった時、岩渕先生をして「湘南高校サッカー部創立以来最弱のチーム」といわれた。とびぬけた力を持った選手もいなく、私を筆頭に、小拉な選手が多く、全国大会をねらえるチームとも思ってはいなかったがガンさんに、ああもはっきり言われると少なからずショックであった。
 梁君をキャプテンとして、弱小チームがスタートしたわけであるが、それ故に、中さん、岩さん、梁君の苦労もたいへんであったろう。梁君とは、今でもたびたび会う機会があるが、当時の苦労話をよく聞かされる。
 しかし、練習はまじめによくやったと思う。今でも一番印象に残っている試合は、新人戦の地区予選の決勝である。私たちのブロックは湘南学園と鎌高と湘南の3チームであった。決勝は鎌高とであったが、当時の鎌高はけっこうレベルが高かった。その試合にかけるイレプンの意気込はすごかった。この試合に負けたら先生に見放されると思ったし、鎌高には絶対負けたくなかった。結果は2対1での辛勝であったが、試合が終わって藤沢でみんなで食べたラーメンの味は一生忘れないだろう。
県大会ではベスト8まで進んだが、関東六浦に苦杯をのんだ。
 発足当時の新チームはたしかに最弱のチームであったが、私が思うには、よく伸びたチームではなかったか。これといったチームの特徴もなかったが、それなりに、こじんまりとよくまとまったチームであったと思う。

久野 浩之

 湘南サッカー部50周年に寄せる文章を‥‥‥、といろいろ思いを廻らせていると、やはり思い出されるのは、泥まみれのボール、諸先輩、後輩、そして仲間たちの顔々々‥‥。苦しかった夏の合宿、そして最後の試合。
 あれから7年余の月日が流れた今、湘南サッカー部の伝統に応えることなく終わった無念さと、それでも脇目もふらずボールを追った3年間への満足感が合い混って、当時の事がなつかしく思い出されます。
 さて、湘南サッカー部50周年をむかえるにあたって、まがりなりにも誇りを忘れる事なくこれからも一企業人として活躍することを誓うと共に、鈴木中監督以下、現役選手諸君の今後の健闘を心から祈ります。

梁 永 叔