サッカー部 番外記

45回生  水谷 政保

 湘南を卒業して早いもので11年になる。しかし、いまだにサッカー部の仲間9人で酒を飲みに行くことが多い。飲みだすと、あの頃のいろいろな場面がくっきりと浮かびあがって流れていく。そして、くだらない昔話がとめどなく続き、つい飲みすぎて、次の日は必ずといっていいほど二日酔となる。
 それは、いわば「サッカー」が我々9人の湘南時代の共通のシンボルであったからであろう。
 当時の我々サッカー少年にとって、釜本のシュートや杉山のセンターリングはあこがれの的であり、圧巻は何といってもメキシコの銅メダルであった。我々も彼らをめざし、「明日の全日本」をめざし、奮闘努力、汗とどろと涙にまみれながら、血のにじむような練習にはげんだものであった。
 しかし、残念ながら不運にも成績面では、学業と同じく、華しい成果を球史に残すことはできなかった。唯一の成果といえば、当時、神奈川NO1で、今でこそ有名な奥寺がいた相工大附高といつもいい勝負をしていたこと位であろう。
 従って酒を飲んでの想い出話もサッカーそのものの名場面集よりも、サッカーを中心として仲間9人が高校時代にくりひろげた、いたずら、ドジ話の数々がメインとなる。
 たとえば
(1)キセル事件
  我々はよく善行で試合をしたが、いつも小田急はタダノリであった。電車賃はコーラ代となった。
(2)カッパライ事件
  湘南電車の行先札とかトヨタのディーラーにあった旗などいろいろなものを盗んできた、しかもそれを部室に飾ったりした。
(3)パチンコ屋事件
  授業中パチンコに行き、補導されそうになったバカが、「山田一雄」といういかにもうそっぽい偽名を使って難(?)をのがれた。
(4)自転車事件
  友人の自転車でパチンコに行き、負けて頭にきたため、そのまま自転車をおいてきてなくしたバカがいる。本人は今でも否認している。
(5)横断歩道タタリ事件
(6)パチンコ屋学生服出入事件
(7)ワイシャツ、ラジオ事件
(8)トイレ破壊事件
(9)ウソダヨ事件
(10)押し屋さん事件
 など、いくらでもくだらない話があるが、他人が聞いてもバカバカしいだけと思われるのでこの位にしておく。
 まあ9人ともともかく何とか前科もなく社会人として生きのぴている。卒業してからもいまだに集まるとバカなことをしている仲間達である。今考えると、ほんとに能力はありながら不運にも成績面では良績を残せなかったが、11年たっても共通の話題、過去の色あせた想い出をきれぎれにくりひろげ、バカバカしく飲み歩き、また新しくバカバカしいことをくりかえす仲間が9人いるということが、かけがえのない我々の成果だったのかもしれない。これは負け惜しみでは決してない。