監 督 の 悩 み

平成5年〜7年
ジュニアチーム監督 田 部 井  徹

 今から約10年位前になるが、湘南ペガサス(ジュニアチーム)の監督を3年間務めることになった。大学3年の時にキャプテンを務めた経験があったせいか、割と簡単に引き受けてしまったが、実際にやってみると結構これがシンドイものであった。学生時代には部員が40人位いたと思うが、何しろ学年が物を言う時代であり、またサッカーを楽しむということ以上に、試合に勝つことが第一優先になっていたため、試合に出られる人、出られない人が当然いて、特に1年生なんかは、試合当日ボール運びだけで終わってしまうことがほとんどだったが、自分達も学年が上がれば、今の先輩のようにプレーできるという考えがあったためか、誰も文句を言わずに部活を共にしたものであった。

 ところが社会人のクラブチームとなると、個々人のサッカーに対する考え方が異なり、試合の勝ち負けに徹底的にこだわる人、試合の勝ち負けより純粋にサッカーを楽しみたい人、ただ単に健康作りの観点から休みの日を利用して気分転換を図っている人など、人それぞれの考え方が混在する。そんな中で試合を行なう訳であるから、監督として誰しも一番頭を悩ますのが、メンバーの人選である。特にプレーイング・マネージャともなると、なおさらのことである。

試合に参加する人数が15人ぐらいであれば、何も悩むことはないが、参加人数が20人以上ともなると、これはもう大変なことになる。試合の始まる前からスタメンはどうしよう、誰と誰を途中で交代させようかなど、試合前のアップもろくにできず、また試合中もプレーをしながら選手交代のタイミングを考えるなど、なかなかプレーにも集中できないのが現状であろう。

 私が監督をしていた時の湘南ペガサスの場合も、例外ではなかった。この背景には、特にこの10年ぐらいの間に、シニアリーグでプレーすることを望む人が、急激に増加してきたことがあげられる。サッカーを愛する仲間が増えることは嬉しいことであるが、反面、監督にとっては悩みの種にもなっている。

試合に来る人は誰しもが、今日は自分が試合に出て何かチームのために貢献しようと、やる気満々で来るわけである。ところがメンバーが大勢集まりすぎると、頭を悩ませるのが監督ということになる。試合に勝つことを優先させれば、何も全員のことを考えることもなく、当日のベストメンバーで試合に臨めばよい訳であるが、湘南ペガサスは従来から、試合に来た人はたとえ時間が短くとも、必ず全員が参加することをモットーに試合をしてきた。

それでも当然ではあるが、試合をやるからには必ず勝ちたいと思ってやっているのであるから、これは欲張りとでも言うしかないのであろう。そこが監督として一番辛い所であり、勝てる試合をみすみす落とすという苦汁も実際に味わった。誰しも試合をやる以上は勝ちたいのは当たり前であるが、それ以前に誰しも試合に出たいというのが、メンバーの共通した願いである。だからこそ監督稼業は辛いのである。

 ただ唯一監督が救われるのは、監督が決めたことに対し誰一人文句も言わずに従ってくれることである。これがなければチームとしての統制などとれるはずもなく、やがてはチームが分解しメンバーもそれぞれバラバラになって、同じ仲間としての活動が出来なくなる。やはり監督はいかに辛くとも、試合の勝ちにこだわりながら、全員を上手く起用することを考えるしかないのであろうか。

 (昭和42年 湘南高卒業)